クラブ週報

静岡中央ロータリークラブ ホームクラブ週報令和6年5月20日(月)【第1577回】例会

2023年度-2024年度
令和6年5月20日(月)【第1577回】例会

日時 2024年5月20日(月)18:00~19:00
会場 中島屋グランドホテル
ロータリーソング 我等の生業
ソングリーダー 藤田委員長
ゲスト
広島大学大学院 国際協力研究科博士課程/チェンマイ大学 社会科学・持続可能な開発地域センター 大石友子様
米山奨学生 チー・ジュンユ君

会長の時間
2023~2024年度 会長 大杉 淳

私は6月までの任期ですけれども、次回の例会はガバナー補佐がお見えになりますので、実質的には今回、私の話としては最後になるかなと思います。
去年はですね、2024年問題ということで色々なお話をさせていただきました。運送業だとかお医者さんだとか建設業の労働時間が制約されて、人手不足に相まって物価上昇しますよ。なんていう話をさせてもらったわけです。

今日は来年の2025年問題についてちょっとお話をさせていただければと思います。
来年の特徴と言いますと、1947年から49年生まれの団塊の世代、この人たちが実は75歳以上になられるんですね。

昨今、1年間にどのぐらいの子どもが生まれるかと言いますと大体80万人ですが、団塊の世代の人たちの頃は実は268万人いました。
もちろん亡くなった方もいらっしゃるんですけども、このボリューム感の人たちがこれから後期高齢者になってきます。
その数、後期高齢者が2200万人、日本の人口からして5人に1人が後期高齢者になります。

ポイントは3つございまして、人口と労働力の人繰り、医療介護社会・社会保障の人繰り、そして空き家、 この3つが大きな特徴になります。
人口と労働、 労働力ですね。これは、少子高齢化が加速しておりまして、もうみなさんそろそろ実感してきてる頃じゃないかと思うんですけれども、こういう人口の統計っていうのは非常によく当たる統計です。
ですから、それを皆さんちょっと覚えておいていただければなと思います。

一部のレポートによると、もう労働人口583万人が不足するというような話もあります。当然、アルバイトの確保も難しくなってきますね。
よく言われてますけど、人手不足が原因でお店を閉めなきゃいけないとか出ておりますけども、私どもの商売でストアなんかやってますけども、今大きな店を開店しようとすると人を集めるのが大変で、多分もう大きな店ってもうできないんじゃないかなっていう風なことを今社内でも言われております。

次いで、医療についてですけども、医師とか看護士さんとかですね、介護士さんの不足というのは、これはもう当然のことと言われております。
総人数っていうよりも、必要なところに人がいないっていうような、この職種は限定されるように思います。

当然、社会保障費も増大されます。
先日65歳以上の介護保険料っていうのが発表されましたけれども、 全国では平均3.5パーセントの上昇で月額6,225円。
2000年の制度開始の時は2,911円でしたから、20年ちょっとの間、2倍ちょっとになっているのが現状です。
一説には2040年は9,000円になるんじゃないかと言われておりますので、 2040年ですからあと16年後に65歳以上になる人は大体月9000円の負担になるということでございます。

最後に空き家問題ですけども、2025年には3人に1人が65歳以上 になります。
そうすると、5人に1人が75歳以上というこの状況なんですけども、65歳以上のなんと80パーセント以上の人が持ち家に住んでる ということらしいです。
ですから、昔の人とはお金ばり良かったんですね、皆さん持ち家を買われて。

ただ、それが今度売りに出そうと思うと、若年層っていうのはどんどん減ってるわけですね。
当然不動産は需要と供給のバランスで成り立ちますので、 空き家の問題っていうのが出てきます。
今年4月からはですね、相続の時に不動産登記が義務化されますけれども、売らなければ空き家という状態になるには変わりはございません。

そもそも、自分のこれ私見なんですけども、不動産なんてものは、自分が住んで利用するために持つか、投資をして利を稼ぐかの2つの種類しか利用価値ってのはないと思うんですよね。メンバーの多くの方も、不動産いっぱいお持ちの方もいると思いますけれども。ちなみに、私は不動産業界にもおりましたが、ちょっとかっこよく言いますと、余分な不動産を持たない主義でございます。本当のこと言うと買えないっていうだけなんですけれども。

これらの問題を解決するために、政府の方もですね、各種対応をしております。
地域総括ケアシステムという構想、構築ですね。このシステムは、いわゆる高齢者がどこかに住むんじゃなくて、自分の住み慣れた地域で生活ができるようにということで、色々な形でサポートをしております。
ですから、今年度改正されたような介護保険なんかの 制度の中の補助率なんかもそういった傾向がはっきりと出ております。

では我々、じゃあ企業家がどうしたらいいかということ。単純に言うと、労働力を減らすか、 労働力を確保するか、この2つの1つなんですね。
労働力を減らすということは、今いる社員は例えば20人いるとする、15人でやっていこうと言うと、やっぱりデジタル、 この辺を駆使してやっていくっていうことが1番大事なことですね。
労働力を確保するためには、今60歳の定年を65歳、70歳に変えるとか、 より効率よく働けるように今の人に研修させてもっと一生懸命勉強してもらうか、あとは家庭にいるような女性の人をどんどん引っ張り出すか、というようなことが非常に大事になってきます。最近よくニュースになりましたね、103万円とか130万円とかというような年収の壁ですね。そういったものもどんどん色々な制度でもっと働けるようにもなってますし、この前私が申し上げた外国人労働者の受け入れもどんどん簡素化されてくるはずですので、そういったものを利用なさってみてはいかがでございましょうか。

いずれにしても、これからの人ってのはね、ほんと労働力がなくて大変だと思います。ですから、皆さんの生活を維持していこうと思うと、 それなりのことを考えていかなきゃいけないと思います。 私、今年65になりますけども、最後の勝ち逃げの世代として、皆さんこれから我々の年金を払っていただくために頑張っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

幹事報告

5月20日(月) 奉仕プロジェクト常任委員会
5月27日(月) 委員会開催日
6月3日(月)  第12回(6月度)理事会(17:10~)、CF(1年を振り返って)、ガバナー補佐クラブ訪問
6月10日(月) 休例会
6月17日(月) 委員会開催日
6月24日(月) 最終例会

その他連絡事項
・6月3日(月) 新会員 市川会員 歓迎会について(例会後)
・クールビズについて(期間:2024年5月1日~10月31日)

委員会報告

報告者:佐野副委員長

会員増強・財団米山委員会より

6月3日の例会終了後に新会員市川さんの歓迎会を行いたいと思います。
詳細に関しましては 後日また連絡いたしますが、 皆さんの参加をお待ちしております。

委員長の皆様は、委員会ごとに取りまとめていただいて、来週の委員会の時までに最終の人数を小林委員長までご連絡ください。
よろしくお願いいたします。

出席報告

担当:川島啓晃会員

会員数 49名
出席人数 36名
出席率 73.5%

スマイル報告

発表者:大村委員長

スマイル金額 23,000円

<トリプル>
藤田委員長 大石友子様をお迎えして

<ダブル>
大杉会長 広島大学大学院 大石様をお迎えして
山田委員長 誕生日のお花ありがとうございました。
長嶋会員 お花ありがとうございました。
赤堀会員 スマイルマンデーします。
相川会員 2日前から歯が痛く本日是永歯科にお世話になりました。痛みに弱い患者で大変ご迷惑をお掛けしましたが、最高の治療を受けることができ、本日ロータリーに参加できるまでになりました。ありがとうございました。

<スマイル>
スマイルマンデーします。

三浦副会長
稲垣副会長
安藤幹事
米澤副幹事
大村委員長
加藤会員
川島会員
花城会員
花森会員
佐野(耕)会員



卓話

ゾウの村の人々とゾウとともに研究すること、ともに生きること -コロナ禍での調査と失業ゾウの支援活動-

発表者:広島大学大学院 大石友子様

本日はこのような素晴らしい場にお招きいただきありがとうございます。広島大学大学院国際協力研究科博士課程の大石友子と申します。
実は私、静岡県静岡市葵区瀬名出身で、長らくタイで調査活動を行っておりまして、静岡に帰る機会がなかったので、今日お招きいただいたことほんとにほんとに嬉しく思っております。 また、私自身のタイで行っております調査と失業ゾウの支援活動について皆様と共有させていただくことも本当に光栄に思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

改めまして自己紹介させていただきたいと思います。
現在、私は広島大学大学院に所属しております。専門としているのは文化人類学という学問になります。あまり文化人類学という学問について聞く機会はないかと思うんですけれど、文化人類学という学問はですね、社会学とか哲学との建設領域となります。

どんなことをする学問かというと、基本的には、現地に1年、2年、 最低でも滞在をして、現地の人々と一緒に暮らしながら、現地の人々の文化であったり知識、また彼らの置かれた状況などを調査していくという学問になります。
研究のテーマとしては本当に幅広くて、宗教について研究している人もいれば、日本の研究室、ラボでips細胞の研究をしている人、またai将棋を研究している人など、様々なテーマを研究することが可能な学問となっております。
私自身の研究領域としては、人と動物の関係、また動物に関するケア、環境と開発といった分野で調査を行っております。

今日お話しさせていただくのは、私の調査地であるタイ東北部で暮らしているクワイの人々と像についてです。
私自身はですね、この地域に2005年から付き合いがあります。高校生の時に、静岡県ボランティア協会の主催する高校生向けのスタディーツアーで初めてこの地域に行き、現在までこの地域での調査活動、また支援活動を継続していきました。今日は、その話について皆さんと共有させていただきたいと思います。

私自身は、大学院で研究活動を行っておりまして、この地域に度々滞在しているんですけれど、1番最近の長期フィールド調査としては、2021年5月から2024年1月に行った調査となります。 この調査はコロナ禍で始めまして、博士論文の執筆のための長期フィールド調査となっております。

どんなことをしたのかというと、クワイの人たちと像が一緒に暮らしている像の村と呼ばれる地域で運営されている、 エレファントホスピタル像に対する医療サービスを提供する機関での採用観察を行いました。 また、コロナ禍でたくさんの像が失業していたということで、失業像への聞き取り式のアンケート調査などを行うとともに、この調査のデータを用いて失業像の支援活動も行ってきました。この支援活動は1月で一旦長期フィールド調査が終わりましたので、 その時点で1度区切りはつけているんですけれど、現在もできる形で支援活動自体は継続しております。

内容に入っていく前に、私の調査対象の1つである像について少し説明させていただきたいと思います。
世界には、像が2種類います。皆さんご存じかと思うんですけれど、通称アフリカ像と言われているサバンナゾウとアジア地域にいるアジアゾウです。
この2つの主はどちらもゾウなんですけれど、別々の種類になるので交配ができません。アジアゾウとアフリカゾウを掛け合わせるということはできないということになります。

私が調査を行っている、タイにいる像は、アジアゾウに当たります。アジアゾウの中には、4種類の亜種があります。それは、インドゾウ、セイロンゾウ、スマトラゾウ、ボルネオゾウの4つの種類です。その中でも、タイにいる像は、1番個体数が多いインドゾウとなっております。
象は日本平動物園にもいますので、ご存じかと思うんですけれど、身長としては、約 2メートルから3メートルほど、体重としては、2トンから4トンほどの体重があります。

寿命は、野生下では、60年から70年ほどと言われており、私の調査では100年以上生きている像もおりまして、ほぼ人間と同じくらい長生きをする動物です。
ただ、主としてしましては、アジア圏で個体数がかなり減少しているという状況にあります。 そのため、1986年にIUCN、国際保護連合によって絶滅危惧種に指定されております。

特に東南アジアを中心にですね、野生、野生のアジア像に対する保護活動というものが積極的に行われています。
タイには像がおそらく8000頭以上いて、飼育像と野生像がいるんですけれど、個体数が増加しているという、比較的アジア圏内では珍しい国になっています。

タイでは約3000年前ほどから象の飼育が行われてきたと言われており、現在でも飼育像と国民によって飼育されている動物になります。
この飼育像はですね、飼育動物として所有の登録が義務付けられており、現在約3800頭が飼育下にあるとみられています。

昔は人や物資の運搬というものをしていたんですけれど、現在は観光業、林業、仏教行事などに従事しています。 一方タイにも野生像はもちろんいます。こういった野生像は野生生物として森林保護地区内で暮らしています。 この個体数としては約4400頭ほどいるとされています。

この野生像なんですが、実は個体数がすごく増加しているので、日本の熊とか イノシシとかのと同じように、農村に出てきて、民家や畑を荒らすという事件も多発しているというのがタイの野生像になります。 今日お話しするのは、飼育像のお話になります。

この昔から、タイ、また近隣の地域で像を飼育してきた民族の1つが、私が調査を行っているクワイの人々になります。 この写真が、クワイの人々がテント衣装をまとっている姿になります。 ゾウの上に乗っているのが、象使いと呼ばれる人々です。で、クワイの人の場合は、象使いが基本的に象の所有者となっています。

ゾウたちは、象の所有者の家の敷地内で暮らしています。なので、動物園というよりかは、家にいるペットとか家畜とかを想像すると、像がどういう風に暮らしているのかっていうことをイメージしやすいのかなと思います。 このクアイの人々は、1961年まで野生像の捕獲に従事してきた人々です。自分たちの道を使って野生像を捕獲して、その野生像を調教した上で、サーカスだとか、遊園地、 また動物園などに売ってきました。ただ、現在はこうした野生像の捕獲は行っておらず、基本的には観光業に従事しています。

こうしたクアイの人々は、ずっとゾウを家族の一員だと語っています。 ペットなんかも私たちは家族の一員と語るかと思うんですけれど、その私たちにとってペットっていうのはほぼ子供のような存在なんですけれど、クアイの人たちにとって象というのは配偶者のようなパートナーの存在だと彼らは言います。

それはなぜかというと、ゾウは先ほども言ったように、ほぼ人間と同じくらいの寿命があります。そのため、村でよくあるのは、象と同じ年にクイの子供が生まれて一緒に育っていくという姿です。子供が一緒に育っていく中で、象使いになっていく。そして、死ぬまでゾウと一緒に過ごしていくというのが、クワイの人々の生き方の1つとなっています。 こうした人たちは、現在ではほとんどが観光業に従事しています。

スリン圏内にはですね、2つの公的なプロジェクトがありまして、そこに約280頭が参加しています。このプロジェクトに入れない像は、対全国の観光地に出稼ぎに出ています。 こうした像が約200頭から300頭ほどいるとみられています。
皆さんご存じの通り、コロナ禍では緊急事態宣言が発令されたり、ロックダウンが行われましたので、観光施設が観光客の減少によって閉鎖、もしくは廃業に追い込まれました。 この結果、コロナ禍で失業した200頭から300頭の像がスリン圏内に戻ってくることとなり、通常は地域内に約300頭しかいなかった像が、約500頭から600頭ほどに増加するという事態になりました。

私自身ですね、コロナ禍に象の村に久々に滞在して、すごく驚いたのは、象が本当に所狭しと いるということですね。だから、象家の裏に像舎があるんですけれど、基本的に像舎にいる象って1頭から2頭ほどなんですけれど、 コロナ禍においてはそのスペースに3頭4頭といる。その狭苦しい中にいるので、像もストレスが溜まって様々な病気になったりとか、事故が起きているという状況がありました。

こうした中で、 研究者としても、この地域に関わる1人としても、何かしらの支援を行っていく必要があるのではないかと思い、立ち上げたのが失業像実態調査支援チームとなります。 コロナ禍では私はエレファントホスピタルで調査を行っていたんですけれど、エレファントホスピタルのスタッフたちもまた、コロナ禍で失業像が増えていること、また像の体調不良が増えていることに対して、何かしらのアクションを起こす必要があると考えていました。 そこでエレファントホスピタルのスタッフたちと話し合って、まずは失業像の実態を調査するためにチームを立ち上げました。 ここに写真が出ているんですけれど、このアンケートを撮っている人たちがチームのスタッフになります。

クワイの人たちの中には単語の読み書きができない人たちもいるので、聞き取り式のアンケート調査を実施しました。 先ほど、200頭から300頭ほどの像がこの地域に戻ってくることになったと言いましたが、実際にそういった像たちがどこから戻ってきたのかというのを示したのがこの地図になります。
本当に、北から南で、また中部、 あと東部と、あと、全国に、クワイの象使いたちが出稼ぎに出てきたということがわかります。

特に多い地域としては、このデータで言えば、パタヤとプーケットという観光地が多くなっています。ちょうどこのアンケートを取った時に、その1週間ほど前にアユタヤの観光施設が 開業したところだったので、実際はアユタヤがもっと多くの、おそらく多分30頭40頭くらいプラスになっているのが実際のデータかと思います。

このアンケート自体は101頭に対して取ったものなんですけれど、その101頭に対してスリンに戻ってきた理由を聞いたところ、94頭が収入がなくなったことが理由としてスリンに戻ってきたと回答しています。

複数回答が可能となっているんですけれど、収入がなくなったこと以外にも、住む場所がなくなった ゾウの食料が確保できない、また、家が恋しくなったといった理由が戻ってきた理由として挙げられました。 この結果からわかるのは、観光施設が廃業もしくは閉鎖となったことで、給与が支払われなくなるとともに、一部の象と象使い達は施設の敷地内から追い出されたという状況がありました。 像は体重の約5パーセントから10パーセントほどの食料を毎日摂取しなければならないのですが、 そうした食料の確保にすごいお金がかかるので、観光施設が収入がない状態では食料を支給しないという方針を取ったところもあり、その場合は像の食料自体の確保が難しくなっているという状況がありました。

この次が、スリン圏内に戻ってきてから収入はあるかどうかというのを聞きました。 回答としては89パーセントが収入がある と答えました。11パーセントが収入がないと答えました。私たちチームはすごく意外で、失業して帰ってきたゾウたちのほとんどが収入がない状態にあるのではないかということを想像していたんですけれど、実際は、小額の場合もあるんですけれど、多くの像が収入があるということがわかりました。この収入がある場合は何から収入を得ているのかというのを聞いたのがこの 右側に、右側の棒グラフになります。
ここでの回答は、複数回答ありなんですけれど、80頭がオンライン果物販売、75頭がライブ配信、11頭がファンからの寄付という回答をしています。これどういうことかというと、オンライン果物販売の販売っていうのは、 ソーシャルメディアを活用してライブ配信を行って、バナナとかパイナップルとかを売るんです。 それを購入する人がいたら、その果物を像に与える、つまり、疑似的な餌やりっていうのを、彼らはオンラインで行っていました。
また、ライブ配信っていうのは、facebookやyoutubeなどを活用して、ライブ配信することで、投げ銭を得たり、銀行口座での振り込みで収入を得ているというのがライブ配信になります。

このように、ソーシャルメディアを活用した収入があるということで、ソーシャルメディアをどのくらい、どのようなソーシャルメディアを活用していますか。と聞いたのが、このグラフになっています。 まず、ソーシャルメディアを活用しているかいないかという質問に対して、94パーセントが活用していると答えています。 この94パーセントっていうのは、95頭にあたるんですけれど、この95頭に対してどのようなソーシャルメディアを使っていますか。っていうの、複数回答ありで尋ねました。その結果、90頭がyoutubeを利用しており、 大体、60頭ほどが、facebookやtiktokも利用しているっていうことがわかりました。この写真で出ているのが、実際のライブ配信の様子です。このように、そのゾウと一緒に、彼らが過ごしている様子っていうのをライブ配信して、それを見てもらって、いろんなチップを送ってもらったりだとか、スタンプとかいろんなコメントとかを読んでライブ配信を継続していく、そして収入も上げていくというようなやり方が取られていました。

また、私たち はエルファントホスピタルで活動をしているので、ゾウの体調の変化っていうのもすごく大きかったのではないかと思い、コロナ前とコロナ後でどのような症状がありますかというのを聞いたのがこのグラフになります。コロナ前では58パーセントの558頭の像が症状がなかったんですけれど、その数がコロナ禍では42頭へと減っています。コロナ前にはなかった症状として、どのような症状が挙げられているかというと、 腹痛、下痢、便秘などの症状が挙げられています。腹痛、下痢、便秘というと、なんかすごく私たちにとっては日常的に起きる症状のように思いますが、ゾウにとっては、実はすごくシリアスな症状となります。
ゾウは2トンから4トンほどの体重があります。それを支えるためのエネルギーを常に補給し続ける必要が あります。ですが、下痢とか便秘、もしくは腹痛が生じると、食べ物を食べることができなくなって、自分の体を支えるためのエネルギーを確保することができなくなります。
確保することができなくなるとどうなるのかというと、倒れてしまいます。 倒れてしまうと、基本的には1日から2日ほどで像は亡くなってしまいます。そのため、腹痛、下痢、便秘っていう症状は、本当に命に関わるシリアスな症状となっています。

このように私たちは像たちがどういう状況にあるのかっていうのは、実態を把握した上で支援活動を行っていくことにしました。

まず実態調査を行った後に支援チームを立ち上げたんですけれど、そのメンバーとしては、エレファントホスピタルに従事している114 栄養士などの他に、失業像を抱える村の役員だったり、 あとは地域の外で活動している研究者などがメンバーとして活動に参加しました。

こうしたメンバーたちは本業が別にあるので、私たちの信念としては、それぞれができることをできる範囲でやるということを 重視して活動をしてきました。
また、NPOとかボランティア団体のような形でチームを立ち上げてしまうと、固定的な支援しか行うことができなくなってしまうということで、ネットワーク型のチームを立ち上げて、各メンバーの専門性や繋がり、知識、技術を生かしながら活動を行ってきました。
また、先ほど収入がある像が多いということを言ったんですけれど、その個別で見ていくと、本当に収入が1日に100円ほどしかない というその像から、1ヶ月で見ると40万円ほど収入がある像もいたりと、本当に個々の状況を見なければ、何が問題であるのかというのを見極めるのがすごく難しいっという状況がありました。
そこで、個々の像の状況に合わせて柔軟な支援を行っていくために、 プロジェクトとして枠組みを決めて支援するのではなく、一頭一頭に合わせた最適な支援を目指すことにしました。

ここで私たちが合言葉にしていたのが、アメーバみたいなチーム、スライムみたいな支援ということです。
アメーバみたいなチームってどういうことかというと、固定的に何かをやるんではなくて、そのネットワーク上で、できる人ができることをできるタイミングでやりながら動いていくチーム、 そして、隙間があったらにゅるっと入り込んでいけるような支援、ていうのを行うことを目指して活動をしてきました。

いろんな支援をこれまでに行ってきたんですけれど、ここでは大きく分けて5つの 私たちが行ってきた支援について紹介したいと思います。まず1つ目が医療サービスの提供です。
先ほど実態調査のデータからも見たように、ゾウたちは様々な体調不良が生じやすくなっている環境があるっということが分かりました。そこで私が調査してたエレファントホスピタルでは、コロナ前まではプロジェクトに参加しているゾウのみを対象に医療サービスを提供していたんですけれど、この支援実態調査以降は、プロジェクトに参加していない地域の像に対しても医療サービスの提供を行うことにしました。

主にプロジェクトの像を支援するために医療品とかその医療設備を整えているので、地域の像に対するサービスに関しては有料という形で提供することになりました。
失業像の多くは、収入があってもすごく少額しかないということで、この有料の治療費もしくは医薬品代を支援してくれる非営利団体と連絡を取り、この非営利団体によってこの有料部分を賄ってもらえるように調整を行いました。
失業像に対しては、こういった非営利団体の紹介を行い、実質的に無料で医療が受けられるような状況を確保しました。

これに合わせて、コロナ禍で生じていた像の体調不良に関して、この地域内でどういう体調不良が起きているのか、その原因は何なのか、その対処はどうしていったらいいのかといったことを情報拡散していきました。

2つ目の支援として、地域での雇用機会の創出を行いました。
この私が調査を行っている象の村では、コロナ前では観光客が多く訪れる地域でありました。この実態調査を行った時点では、観光客が戻りつつある状態ではあるものの、コロナ前ほど観光客が来なくなっているという状況がありました。そこで、失業像の扱いが経営している宿泊施設であるバンチャンハイという 施設を活用してですね、ホームステイプログラムの考案を行いました。
このホームステイのプログラムでは、様々なアクティビティ、例えば、象にゾウと一緒に散歩をするとか、農業用トラックに乗って地域内のツアーをするといったようなアクティビティを考案して、失業像や地元の人々の雇用機会を創出しました。 また、村の人たちは、高齢者が多いということもあって、なかなかソーシャルメディアを活用してプロモーションしていくことができない状況がありました。
そこで、スタッフたちがメインとなって、特に、facebookを活用しながら、プロモーションを行うとともに、実際のこの宿泊施設の運営なども手伝うことで、バンチャンハイを盛り上げるという活動を行って来ました。最近では、吉本のタイ住みます芸人のあっぱれ小泉さんが滞在して、プロモーションをしてくださったりだとか、慶応義塾大学の学生さんたちが スタディツアーで活用するなど、日本人も含めて様々な観光客の方が訪れてくださって賑わいを見せているという状況にあります。

3つ目の支援として、タイ国内外に向けた情報発信というのを行っています。で、失業像が生じた2020年、21年頃にはですね、タイ国内のメディアが結構その失業像の問題だとか、この象の村の状況について取り上げてくれていたんですけれど、コロナが落ち着くにつれて、次第に社会的な関心も薄れていきました。
これによって、その失業している像がいるっていうこと自体が、社会的に忘れられているという状況が生まれていました。
社会的な関心を向けてもらうために、積極的にメディア対応をするとともに、いろんなその象の村の現状について、情報発信を行ってきました。この写真に写ってるのは、ちょうど、世界不思議発見が取材に来た時の様子です。
また、それだけではなくて、実態調査の結果などを関連機関にも共有することで、外部の機関に対して様々な支援を行ってもらえるよう呼びかけも行っています。

次の支援としては、snsチャンネルの拡散ということがあります。
失業像たちの多くがソーシャルメディアを活用しているということで、そのソーシャルメディアのチャンネルを主に日本人に向けて紹介してくっていう活動をnote像の村の住人で行ってきました。

これにより、像たちの支援を私たちがするだけではなくて、個々のフォロワーだったり、個々のファンの人たちから直接支援をしてもらえるように、 こういった活動を行ってきました。また、note像の村の住人では、失業造支援のための支援金の募集も行いました。 こうしたnoteの支援金を活用して行ったのが、個別の像に対する支援です。

失業像の中でも特に困難な状況にある像のために、こうした支援金を使って支援を行ってきました。
具体的にどんな活動を行ってきたかというと、例えば、入院中の失業像の食料の支援だとか、非営利団体が寄付できない医薬品の寄付などを行うことで、治療に関する負担であったり、食料に関する負担というのを減らすような支援を行ってきました。
また、最近は、失業状態が長期化している像に対して支援を行っています。これまでは一時的な困難な状況に対して支援を行ってきたんですけれど、最近はその失業状態が長期化して仕事がなかなか見つからない像に対象を移して、 象たちの食料となる牧草の栽培や樹木の植樹に関する支援を行っています。 このような形で支援活動は現在継続しています。

最後に、失業像は今どういう状態にあるのかということを共有させていただきたいと思います。2023年頃から、タイ全国の観光施設が再び営業を再開し始めました。 そのため、多くの失業したゾウたちは観光施設に再び出稼ぎに出るようになっています。

ただし、こうした観光施設だと、オス像がやっぱり凶暴なイメージとか、その観光客に対してあんまり愛想が良くないというイメージがあるため、こうした出稼ぎから排除されているという状態があります。
また、メス像でも、その子育て中の像だったり妊娠している像に関しては、なかなか出稼ぎに出るというのが難しい状況にあります。

そこで、こうした像たちは今、新たな出稼ぎ先を探すのではなくて、いかにこの象の村の中で生きるかっていうことを考え始めています。
ここでは、今まではネガティブに失業した像、失業像だったんですけれど、だんだんここで生きる道を模索する、ポジティブな新たな道を探すという変化が生じています。
こうした像たちに今支援の対象を移しつつ、新たな支援活動というのを常に模索しているというのが私たちの今の状況です。
今後も私たちは支援チームとして、で、また私自身は研究者としても、ゾウとゾウ使いに寄り添いながら、できることをしていきたいと考えています。

以上です。ありがとうございました。